対談コラム 「不妊治療の“ゴール”はどこにあるのか──10年の歩みと、その先の選択②」
ピアサポーター2人がテーマについて対談をするコラム。
3回に分けてお送りする、ピアサポーターのemikoさんと那須彩さんの対談コラムです。
第2弾のテーマは『不妊治療の“ゴール”とは何か──終わりではなく“一区切り”』です。
彩:「そんななか、通院治療をストップしたきっかけは何だったんですか?」
emiko:「一番大きかったのはお金です。補助金や保険適用が終わって、これ以上続けるのは現実的に難しいと感じました。治療費だけでなく、交通費や宿泊費もかかっていたので、毎月赤字になるような状況で。将来の生活や、もし別の形で子どもを迎える場合のことも考えるようになって、続けることに限界を感じました。」
彩:「ありがたい制度とは言え、足は出ますからね。私も随分とお金を注ぎ込みました。」
emiko:「そうですね。保険適用のおかげで続けられた部分が大きく、その制度にとても感謝しています。ただ、お金以外にも、治療がうまく進まず年齢的にも限界を感じ、いつまでも続ける事は出来ないと考えていました。」
彩:「納得してやめられたわけではない?」
emiko:「そうですね。「納得してやめた」というよりは、「やめざるを得なかった」という感覚に近いです。正直、お金があれば続けていたと思いますが、結果は変わらなかったかも知れません。」
彩:「不妊治療の“終え方”って事情もタイミングも本当に人それぞれで、正解不正解はない。
本当に難しいテーマですよね。
あと「子どもを諦めた」という表現もモヤっとします。」
emiko:「はい。”卒業”とか”終結”という言葉をパッと使うこともありますが、実は私にはあまりしっくりこなかったですね。今の自分の感覚としては”一区切り”という表現が一番近いです。」
彩:「一区切り、というのは?」
emiko:「今の医療や自分の年齢、体力、経済状況の中で、一旦やめているというだけで、気持ちとしては完全に終わっているわけではない、ということです。
もし将来、医療が進歩して、年齢に関係なく出産できるような技術が確立されたら、もう一度挑戦したいと思うかもしれません。」
彩:「emikoさんは旅の途中なわけだ。
この記事を見てくださる方のなかにも、”不妊治療を終えた人”のくくりで語られることについて、違和感を覚える人もいるかもしれませんね。
その違和感も”本当の気持ち”として持っていていいですよね。」
emiko:「そう思います。妊活を始めたころのゴールは妊娠・出産だったけれど、今はまた違う道に向かっている。もしチャンスがあれば妊娠・出産のゴールも視野に入れるかもしれない。
どこかに望みをつなげたいという気持ちなのかもしれない。」
彩:「お金という現実的な理由で一度止まったけれど、気持ちとしては“終わり”ではないんですね。」
emiko:「お母さんになりたいという気持ちは今でも持ち続けています。」
彩:「素敵ですね。」
emiko:「不妊治療の通院こそストップしていますが、知人や親せきに嫌なことを言われたことを、ふと思い出して気分が沈むこともありますし、流産の手術の日のこと、流産した子の出産予定日だったなとか、思い出すこともあります。
でもそれを思い出すのは悪いことではないのかな、自分は今こういう気持ちなんだなというように受け止められるようになりました。前を向いたり後ろを向いたりしている感じ。」
彩:「心境が少しずつ変わってきているんですね。時間がかかることだと思います。
前を向いたり後ろを向いたりしている中で、特別養子縁組や養育里親という選択肢も考えているんですね。」
emiko:「はい。研修を受けて登録もしていますし、実際に一時預かりでお子さんを預かった経験もあります。」
彩:「その経験はいかがでしたか?」
emiko:「すごく印象的でした。大変でしたがとても楽しかったです。
短期間ではありましたが、子どもと過ごす中で「自分は本当に子育てがしたかったんだな」と実感しました。」
彩:「新たな発見があったんですね。」
emiko:「そうなんです。いまは子育てなどに関する民間資格を取る予定でいます。短期の子育てをしてみて、少し目線が変わって、興味や関心のあることが変わりました。
私って単純…とも思いますが、今、前を向くための一つの行動かもしれません。」
彩:「いいですね!どこに進んでも進む方角は「前」ですからね。
旅の途中のemikoさんはいま「子育て」の方を向いているということなんだ。」
emiko:「そうですね。ただ同時に、養子や里親制度についての理解も深まりました。
病院からは、こういう選択肢もあるよと紹介いただいたんですが、児童相談所に問い合わせたときに、
これは『子どもが欲しい大人のための制度』ではなく、『子どものための制度』です、と大切な事としてはっきりと伝えられました。
ハッとさせられました。」
彩:「私も、emikoさんからそのお話を聞いてハッとさせられました。
不妊治療をされる方が増えて、治療を経て検討・問い合わせされるご夫婦が増えたという現実があるのかもしれないですね。」
emiko:「そう思います。そこを理解した上で向き合う必要があると感じました。
今になって思うことではあるんですが、プレコンセプションケアの重要性は強く感じています。もっと早い段階で知識があれば、選択肢や判断も変わっていたかもしれないので。
また、不妊治療だけでなく、養子縁組や里親制度なども含めて、『知っておくこと』がとても大切だと思います。養子・里親になるにも年齢制限が設けられている団体もありますからね。」
彩:「確かにそうですね、42歳まで通院がんばって、そのあとに養子や里親を調べ始める…ではあまりに時間が足りないかもしれませんね。」
emiko:「そうなんです。」
対談コラム③に続きます…
● 対談をした2人 ●
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